脳内に流れるオトたち

音楽ネタ。新しく買ったCDやDVDのレビューなど。

田中義人というギタリスト

私が「ギタリスト 田中義人」を知ったのは、'08年のスガシカオライブでのこと。
当時はシカオバンドのメンバーのひとり、という程度の認識しかなかったけれど、本格的に義人さんに注目し始めたのはC.C.Kingの活動から。C.C.Kingは田中義人、松原秀樹森俊之玉田豊夢の4人のバンド。話せば長いいろいろなご縁があってC.C.Kingのライブに行ったんだけど、そのとき以来義人さんの虜になりました。正直言って、ギターのテクニックとかそういうことは何もわからない私だけど、義人さんがとにかくギターが大好きなんだなってことは確実に伝わってきた、そんなライブ。ずっとキラキラの笑顔でギターを弾く姿は正にギター王子。


それ以来、義人さんの参加するライブに行き、ライブハウスなんかだと直接お話しできたりもするわけで(ほんのちょこっとだけど)、そんな中で彼の気さくな人柄にも惹かれていったりして、だんだんミュージシャンとして好きなのか、ひとりの人間として好きなのか(恋愛感情ではなく)よくわからない感じになってくる。これは、坂本竜太さんやその他のミュージシャンも同じことが言える。でも、人として魅力的だからいい演奏ができるということも言えるのかななんて思ったりもする。

 

あるとき、彼の手の具合がよろしくないらしいという情報を聞いた。記憶が定かではないけど、腱鞘炎とか最初はそんな感じに聞いていたように思う。職業病だからある程度は仕方ないのかもしれないけどお大事にね、ぐらいの気持ちでいたんだけど、どうやらもっと重症らしいなんて話も入ってきたりした。もしかしたら、もうギタリストとしては無理なのかもしれないとも思った。
もしもギタリストとしての活動ができなくなったとしたら、もう今までのようにライブや音楽番組とかでその姿を見ることはできなくなるかもしれないけど、例えばプロデュース業とか、どこかで音楽に携わっていてほしいなぁなんて思っていた。


ところが、昨年秋。
ちらほらとネットに義人氏の姿が現れ始めた。スガさん、竜太さん、義人さんでエリカ・バドゥのライブに行った写真がTwitterにアップされたり、ご本人もTwitterを始めたり、そして久しぶりに更新されたブログに闘病記が綴られた。病名は局所性ジストニア。体の一部が自分の意志とは関係ない動きをしてしまうそうで、音楽家に多い病らしい。

 

ある程度は想像していた。でも想像以上だった。
義人さんの場合、ギターが大好きでギタリストになったわけで、そのギターが弾けなくなったら仕事も趣味も一度に失うことになる。そんな辛く苦しい状況の中でも、いろいろな病院を訪ねてみたり、治療法を試してみたりした結果、義人さんは手術という選択をする。意識のある状態で頭蓋骨を開いて脳に電気を流す(実際にギターを弾けるのかを確認しながらの手術だから)、想像もしたくないような手術だけど、それを選択するしかない状況、しかもそれで確実に治るとも言えない、まさに究極の選択だったと思う。
そして実際に、手術後は自分の名前すら書けない状況に陥り、絶望的な気持ちになったようだ。そこらへんの経緯は義人さんのブログに詳しく書かれているので、興味のある方はゼヒ。


その後、壮絶なリハビリを乗り越え、最近では演奏活動を始めている義人さんが昨日のシカオライブにゲスト出演したらしい。(要はこのことが書きたかったw)義人さんご本人も泣いてしまったらしいけど、もし私もその場にいたら泣いてしまったと思う。よくここまで戻ってきたねって。


以前の状態を100%として、今がどれくらいの状態なのかわからないけれど、また100%に戻ったらCD出して欲しいなぁ。「THE 12-YEAR EXPERIMENT」からもう5年。前作も大傑作で未だにしょっちゅう聴いているんだけど、苦しい経験をして再生した義人さんの作品を聴かせて欲しいと切に切に願うところ。

 

 

THE 12-YEAR EXPERIMENT

THE 12-YEAR EXPERIMENT